ローム、高温時オン抵抗を約30%低減する「第5世代SiC MOSFET」を開発
ローム株式会社は、xEV(電動車)用トラクションインバータやAIサーバー電源、データセンターなどの産業機器向け電源に最適な最新のEcoSiC™、「第5世代SiC MOSFET」を開発しました。

高温動作時のオン抵抗を約30%低減
この第5世代SiC MOSFETは、素子構造の見直しと製造プロセスの最適化により、パワーエレクトロニクス回路の実使用環境で重要とされる高温動作時(Tj=175℃)のオン抵抗値を、従来の第4世代品と比べて約30%低減することに成功しました(同耐圧、同チップサイズ比較)。これにより、xEV用トラクションインバータなど高温環境で使用されるアプリケーションにおいて、ユニットの小型化や高出力化に貢献することが期待されます。

サンプル提供と今後の展開
第5世代SiC MOSFETのベアチップサンプルは2025年より先行して提供が開始され、2026年3月に開発が完了しました。さらに、2026年7月からは、第5世代SiC MOSFETを搭載したディスクリートおよびモジュールのサンプル提供も開始される予定です。ロームは今後、さらなるラインアップ拡大に取り組むとともに、設計ツールの充実とアプリケーション設計のサポート体制を強化していく方針です。
開発の背景とSiCデバイスの重要性
近年、産業機器分野では生成AIや大規模データ処理の普及に伴い、高性能サーバーの導入が加速しています。これらのアプリケーションは電力密度を押し上げるため、電力系統への負荷増大や局所的な需給ひっ迫が懸念されています。また、この課題の解決策としてスマートグリッドの導入が注目されていますが、エネルギー変換や蓄電段階での損失低減が課題です。車載分野の次世代電動車では、走行可能距離の伸長や充電速度の向上に加え、インバータの低損失化やOBC(車載充電器)の性能向上が求められています。このような数キロワットから数百キロワット級の大電力で動作するアプリケーションにおいて、損失低減と高効率化を両立できるSiCデバイスの普及が進んでいます。
ロームは、2010年に世界で初めてSiC MOSFETの量産を開始し、早くから車載信頼性規格(AEC-Q101)に準拠した製品をラインアップするなど、幅広い大電力アプリケーションにSiCを実装することで、エネルギーロスの低減に貢献してきました。今回開発された第5世代SiC MOSFETは、業界トップクラスの低損失を実現しており、さらなるSiC搭載アプリケーションの拡大を推進します。
今後ロームは、第5世代SiC MOSFETの耐圧およびパッケージラインアップを拡充する計画です。普及フェーズに入ったSiCのさらなる社会実装を推進することで、様々な大電力アプリケーションにおける電力の有効活用に貢献していくとのことです。
EcoSiC™ブランドについて
EcoSiC™は、パワーデバイス分野においてシリコン(Si)を上回る性能で注目されている、シリコンカーバイド(SiC)素材を採用したデバイスのブランドです。ロームは、ウエハ製造から製造プロセス、パッケージング、品質管理方法に至るまで、SiCの進化に不可欠な技術を独自で開発しています。また、製造工程においても一貫生産体制を採用しており、SiC分野のリーディングカンパニーとしての地位を確立しています。
- EcoSiC™は、ローム株式会社の商標または登録商標です。
アプリケーション例
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車載機器:xEV用トラクションインバータ、車載充電器(OBC)、DC-DCコンバータ、電動コンプレッサ
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産業機器:AIサーバーやデータセンターなどの電源、PVインバータ、ESS(電力貯蔵システム)、UPS(無停電電源装置)、eVTOL、ACサーボ
用語説明
- トラクションインバータ:電動車の駆動用モーターは位相差120度の3相交流で駆動されます。この3相交流を実現するためにバッテリーから供給される直流を交流に変換するインバータがトラクションインバータです。






