発売延期を乗り越え、ついに登場――。ダイハツ ムーヴが30周年を迎えた今、7代目としてフルモデルチェンジしました。認証不正問題による開発中断を経て、信頼回復と新たな時代の軽自動車づくりに挑む、まさに「再起の一台」です。
本記事では、公式発表内容をもとに、新型ムーヴの開発背景から、走行性能、安全装備、使い勝手、価格帯、そして注目のスライドドア標準装備まで、徹底的にわかりやすく解説。「結局、何が変わったの?」「どのグレードを選べばいい?」という疑問にお応えしながら、購入検討中の方にも、ただのクルマ好きにも読み応えのある内容をお届けします。
読み進めれば、新型ムーヴがなぜ今の時代に“ちょうどいい”のかがきっと見えてくるはずです。
- 7代目ムーヴのフルモデルチェンジの背景と開発の狙い
認証不正による遅延を経て再スタートした、ダイハツの決意が込められた一台とは? - 新型ムーヴのターゲット層と“ちょうどいい”という魅力
「メリハリ堅実層」に刺さる設計思想と、ハイト系軽自動車としての立ち位置を解説。 - 走行性能・燃費・安全装備の進化ポイント
DNGA採用、約10%燃費向上、全車スマートアシスト標準化など、進化の核心に迫ります。 - 装備・価格・グレードの選び方ガイド
L・X・G・RSの4グレードの違いやおすすめポイントをわかりやすく比較。 - カラー展開やアナザースタイルなどカスタムの楽しみ方
13色のモノトーン+2トーン、さらに個性を演出できる専用スタイルも紹介。
ムーヴがフルモデルチェンジ!30周年を迎えた新時代のスタート
発売日と背景:認証不正を経て再始動
ダイハツの人気軽自動車「ムーヴ」が、2025年6月5日に7代目モデルとしてフルモデルチェンジを果たしました。実はこのモデル、本来は2023年に発売される予定でしたが、同社が抱えていた認証不正問題の影響で、約2年の遅延を経てようやく登場となりました。
今回の新型ムーヴは、ダイハツにとって単なる新型車ではありません。失われた信頼を取り戻し、「これからのクルマづくり」を象徴する再出発の一台です。新たな開発体制のもと、設計・生産・品質すべてを見直してつくられたこの車には、同社の真摯な姿勢と覚悟が込められています。
累計340万台以上、軽ハイトワゴンの代表格
初代ムーヴが誕生したのは1995年。以来30年にわたり、ムーヴは軽自動車の定番モデルとして多くのユーザーに愛され続けてきました。累計販売台数は340万台以上を記録し、その実績はまさに“国民的軽自動車”の名にふさわしい存在です。
時代やニーズの変化に柔軟に対応しながらも、常に“日常にちょうどいい”価値を提供してきたムーヴ。そんな伝統を受け継ぎつつ、新しい魅力を詰め込んで登場したのが、今回の7代目モデルです。
開発コンセプト:「堅実で合理的」なスライドドアワゴン
ターゲットは“メリハリ堅実層”
新型ムーヴの開発において、ダイハツが明確に意識したのが「メリハリ堅実層」と呼ばれるユーザー層です。これは、無駄な支出は避けつつも、本当に価値のあるものにはきちんと投資を惜しまない、バランス感覚に優れた現代的な生活者たちを指します。
彼らが求めるのは、派手な装飾や過剰な装備ではなく、日常にちょうどよくフィットし、安心して長く付き合える道具としてのクルマ。新型ムーヴはそうしたニーズに応えるべく、実用性、経済性、上質さをバランスよく融合させた設計となっています。
軽自動車市場の変化とムーヴの立ち位置
ここ数年、軽自動車市場では「スーパーハイトワゴン」と呼ばれる背の高いモデルが人気を集めてきました。しかし、その一方で「価格が高くなりすぎた」「サイズが大きすぎて運転しにくい」といった声も多くなっています。
そうした中で、新型ムーヴは“原点回帰”とも言える「ハイトワゴン」というカテゴリーで勝負します。全高を抑えつつも、スライドドアを標準装備することで利便性を確保。軽自動車本来の“使いやすさ”と“ちょうどよさ”を見直し、コストパフォーマンスにも優れた一台として、多くのユーザーに再評価される存在を目指しています。
デザインの進化:端正で凛々しいスタイル
ムーヴ初のリアスライドドアを全車標準装備
7代目ムーヴの大きな進化ポイントのひとつが、「リアスライドドアの全車標準装備」です。これまでムーヴはヒンジ式ドアが中心でしたが、今回は全グレードでスライドドアを採用。乗降時の使いやすさが格段に向上しました。
特に都市部や商業施設など、駐車スペースが限られた場所での乗り降りに強みを発揮。ベビーカーの出し入れや子どもの乗り降りもスムーズで、ファミリー層にとって大きな安心材料となるでしょう。
外観の特徴:縦型コンビランプとキャラクターライン
新型ムーヴは、「端正で凛々しい」をテーマにした洗練されたエクステリアデザインを採用しています。サイドには水平基調のキャラクターラインが走り、伸びやかで落ち着いた印象を与えます。
さらにリアには、初代ムーヴをオマージュした縦型のリアコンビネーションランプを採用。これにより、ムーヴの歴史と個性をしっかりと継承しながらも、現代的なデザインへと昇華されています。
内装の質感と機能性の両立
インテリアはシンプルで使いやすい設計が特徴です。インパネには水平基調を採用し、視界の広さや操作のしやすさを重視。グレードによってはブラウンやブラックを基調にした上質なカラートーンが用意されており、実用的ながらも落ち着いた空間が広がります。
収納スペースも充実しており、助手席アッパーボックスやセンターコンソールなど、日常的に使いやすい工夫が随所に感じられます。シート素材も肌触りに配慮されており、長時間の運転でも快適に過ごせる設計です。
走行性能と燃費:DNGAプラットフォームで刷新
軽量高剛性ボディとKFエンジン+D-CVT
新型ムーヴは、ダイハツが展開する次世代車体構造「DNGA(Daihatsu New Global Architecture)」に基づいて開発されました。これにより、車体剛性を高めながらも軽量化を実現し、走行安定性や操縦性が大幅に向上しています。
パワートレインには、改良型のKF型エンジンとD-CVT(Dual mode Continuously Variable Transmission)を組み合わせ、街乗りから郊外走行までスムーズで力強い加速感を実現。特に発進時や坂道での力強さが印象的で、従来の軽自動車とは一線を画す走りが体感できます。
燃費約10%向上(WLTCモード)
今回のモデルチェンジでは、走行性能だけでなく燃費性能にも大きな進化が見られます。WLTCモードによる燃費測定では、従来モデルと比べて約10%の向上を実現。これにより、ガソリン代の節約はもちろん、環境負荷の低減にもつながります。
また、ターボエンジン搭載のRSグレードでも高い燃費性能を維持しつつ、力強い加速性能を楽しめるため、燃費と走りのバランスを重視するユーザーにも最適な一台となっています。
先進安全装備:全車スマートアシスト搭載
17種類の予防安全・運転支援機能
新型ムーヴには、ダイハツの先進安全技術「スマートアシスト」が全車に標準装備されています。最新版では、従来を上回る17種類の予防安全・運転支援機能を搭載し、より安心・安全なドライブ体験を提供しています。
具体的には、衝突回避支援ブレーキ、夜間歩行者や自転車への対応強化、ブラインドスポットモニター(BSM)、後方車両接近警報(RCTA)、急加速抑制制御、車線逸脱警報・制御など、あらゆる状況を想定した支援が充実。
駐車時の周囲確認を支援する「パノラマモニター」や、高速道路などでの運転疲労を軽減する「アダプティブクルーズコントロール(ACC)」など、上位グレードではさらに高度な装備も利用できます。
電動パーキングブレーキとオートホールド
また、利便性と安全性を両立する装備として注目されるのが、「電動パーキングブレーキ」と「オートホールド機能」です。信号待ちや渋滞時に自動でブレーキを保持してくれるオートホールドは、一度使うと手放せない便利な機能。
これらの装備は全グレードに標準ではありませんが、Xグレード以上に搭載されており、安全装備を重視するユーザーにとって非常に魅力的なポイントとなっています。
利便性の向上:快適な使い勝手と収納設計
ワンタッチオープン&タッチ&ゴーロック機能
新型ムーヴでは、リアスライドドアの利便性を最大限に引き出すために、「ワンタッチオープン機能」や「タッチ&ゴーロック機能」が導入されています。キーをポケットに入れたまま、ドアハンドルのスイッチに触れるだけでドアが開閉でき、荷物で手がふさがっているときも便利です。
また、「タッチ&ゴーロック」では、ドアを閉めた直後にセンサーに触れることで自動的に施錠。子どもの送り迎えや買い物帰りのシーンでも、安心してスムーズにクルマから離れられます。
多彩なシートアレンジと広いラゲッジスペース
車内のシートアレンジも非常に柔軟で、リヤシートをスライドさせて足元スペースを広くしたり、荷室を拡大したりと、用途に応じて多彩な使い方が可能です。「ロングソファーモード」や「フラットラゲージモード」などの展開で、日常使いからちょっとしたレジャーまで幅広く対応します。
さらに、ラゲッジアンダーボックスの容量も拡大されており、床下収納として使えることで、荷物の整理や積載の自由度が高まりました。小さなボディに賢く収まる収納設計は、まさに軽自動車の真骨頂です。
Qi対応ワイヤレス充電や大画面ディスプレイオーディオ
新型ムーヴは、デジタル時代の使い勝手も強化されています。上級グレードでは、Qi規格に対応したスマートフォンのワイヤレス充電器を搭載し、ケーブル不要で簡単に充電が可能です。
また、6.8〜10インチのディスプレイオーディオには、Apple CarPlay(ワイヤレス対応)やAndroid Autoも利用可能で、ナビや音楽、通話を手軽に操作できます。使い勝手の良さと現代的な装備が融合したインテリアは、どの世代にも快適な車内時間を提供してくれます。
グレード展開と価格帯
L/X/G/RSの4グレード構成
新型ムーヴは、使い方や予算に応じて選べる4つのグレード(L、X、G、RS)を展開しています。エントリーモデルの「L」は必要最低限の機能を備えた実用重視モデルで、価格を抑えながらもしっかりとした基本性能を提供します。
「X」は、電動パーキングブレーキやオートホールドなど、日常使いで役立つ機能を充実させたバランス型グレード。「G」はさらに質感や快適装備が向上し、ワンランク上の満足感を求めるユーザーに適しています。
ターボ搭載のRSは力強さと上級装備を両立
最上位グレードの「RS」は、ターボエンジンを搭載し、力強い走りとともに装備の充実度も高いのが特徴です。スポーティなフロントグリルやアルミホイールを採用し、走行性能・外観ともに一味違う仕上がりとなっています。
通勤・送迎だけでなく、遠出や高速道路の利用が多い方には、この「RS」グレードが特におすすめです。走りを重視しつつ、安全性と快適性を妥協しない選択が可能です。
価格帯:135.9万円〜202.4万円
新型ムーヴのメーカー希望小売価格は、最も安価な「L(2WD)」で1,359,000円から。最上級の「RS(4WD)」では2,024,000円となっており、装備や駆動方式によって価格が幅広く設定されています。
予算に応じて必要な装備がしっかり選べるため、「コスパ重視派」から「走りや快適性重視派」まで、幅広いユーザーにフィットするグレード構成となっています。
カラーバリエーションとアナザースタイル
13色のモノトーンと2トーンカラー
新型ムーヴでは、ボディカラーにも多彩な選択肢が用意されています。定番のホワイト、ブラック、シルバーに加え、個性を演出できる鮮やかなブルーや、落ち着きのあるグリーン系など、全13色のモノトーンカラーがラインアップされています。
さらに、「シャイニングホワイトパール×ブラックマイカメタリック」などの2トーンカラーも複数設定されており、ファッション感覚でクルマを選びたい人にも嬉しい展開です。カラーで自分らしさを表現できるのも、新型ムーヴの魅力のひとつです。
DANDY STYLE/NOBLE STYLEなど個性派コーディネート
注目すべきは、「アナザースタイル」と呼ばれる特別仕様パッケージの存在です。たとえば「DANDY STYLE」は、クローム加飾やシックな内装をあしらい、落ち着いた大人の雰囲気を演出します。
一方、「NOBLE STYLE」は、インテリアに上質なカラーコーディネートを施し、華やかで洗練された印象に。どちらも通常グレードとは一味違う個性を打ち出せる仕様で、「ちょっといいムーヴに乗りたい」という人にぴったりです。
このように、新型ムーヴは“選ぶ楽しさ”も重視されており、装備やグレードだけでなく、外観や内装のデザインでも自分らしさを表現できる設計になっています。
生産・販売計画と今後の展開
中津第2工場で生産、月販目標は6,000台
新型ムーヴの生産は、大分県中津市にあるダイハツ九州 中津第2工場で行われています。この工場は高品質な軽自動車の生産拠点として定評があり、新型ムーヴも万全の品質管理体制のもとで組み立てられています。
販売面では、月間6,000台の販売目標が掲げられており、これまでの信頼とブランド力を背景に堅調な販売が期待されています。全国の販売店では6月初旬から順次展示車・試乗車が配備され、注目度はすでに高まっています。
全国一斉発売と6月中の展示・試乗イベント
新型ムーヴは2025年6月5日に全国一斉で発売されました。これに合わせて、各地のダイハツ販売店では特別展示イベントや試乗キャンペーンが開催されています。公式サイトや販売店のSNSなどでも、各種イベント情報やオプション装備の紹介が充実しており、購入検討を後押しする取り組みが進められています。
また、今後は特別仕様車や限定モデルの展開も視野に入れており、ムーヴのさらなる進化が期待されています。今回のモデルチェンジをきっかけに、軽自動車市場の新しいスタンダードとして、再びムーヴが注目の中心に返り咲くことは間違いなさそうです。