はじめに
株式会社マーケットリサーチセンターは、「スピーカーの日本市場(2026年-2035年)」と題する調査資料を発表しました。このレポートは、日本のスピーカー市場の規模、動向、セグメント別予測、関連企業の情報などを網羅しています。
市場規模と成長予測
日本のスピーカー市場は、2025年時点でおよそ17.1億米ドル規模に達しています。この市場は、2026年から2035年にかけて年平均成長率(CAGR)3.6%で拡大すると予測されており、2035年には約24.4億米ドルに達する見込みです。
市場を牽引する主要要因
市場成長の主な要因としては、オンライン動画・音楽ストリーミングサービスの普及、ワイヤレススピーカーへの需要移行、可処分所得の増加、スマートホーム機器の普及、そしてBluetoothやWi-Fiといった無線通信技術の高度化が挙げられます。
ワイヤレス化とポータブル化
日本では、従来の有線スピーカーからワイヤレス・ポータブル型への需要が顕著に移行しています。設置の容易さや持ち運びやすさが重視されるようになり、BluetoothやWi-Fiを通じてスマートフォンやテレビなどと簡単に接続できる製品が支持されています。特に、複雑な配線が不要で複数のデジタル機器と連携できる点が、ワイヤレス製品の大きな利点とされています。
スマートホームとAI連携
IoTやAIの導入も進み、スピーカーは単なる音響機器としてだけでなく、家庭内のスマートデバイスを操作するインターフェースとしても活用されています。音楽再生に加えて、音声コマンドによる家電操作や情報検索が可能になることが、テクノロジーに親和性の高い日本の消費者にとって付加価値となっています。AlexaやGoogle Assistantのような音声AIサービスの普及も、スマートスピーカーの需要拡大に寄与しています。
ホームシアター需要の拡大
エンターテインメント用途では、ホームシアターシステムの需要が市場を押し上げています。国内におけるOTT(Over-The-Top)プラットフォームの利用拡大に伴い、自宅で映画やドラマを高品質な音響で楽しみたいというニーズが増加しています。可処分所得の増加も、高価格帯のホームシアター設備への支出を支える要因とされています。
2021年5月には、Wireless Speaker and Audio Association(WiSA)メンバーであるOnkyo Home Entertainmentが、配線を簡素化しつつ映画館に近い音響体験を提供するWiSA認証のSound Sphereオーディオシステムを投入しました。また、2024年4月にはSony Electronicsが「ULT POWER SOUND」シリーズを発表し、Bluetoothスピーカーやワイヤレスヘッドホンを市場に投入しています。
ポータブルスピーカーの成長
小型・軽量で持ち運びやすいポータブルスピーカーも成長分野の一つです。旅行や屋外活動で音楽を楽しみたい消費者からの支持を集めています。レポートでは、日本の観光産業の回復・拡大もポータブルスピーカー需要を後押しする可能性があると指摘されています。ただし、観光産業の拡大がスピーカー販売に直接結びつくとは限らず、製品の利便性が中心的な要因であると考えられます。
Eコマースの重要性
販売チャネルでは、Eコマースの重要性が高まっています。Amazonや楽天市場といった主要オンラインプラットフォームでは、国内外の多くのブランドのスピーカーが取り扱われ、消費者は価格やレビュー、仕様などを手軽に比較できます。経済産業省のデータによると、電気・電子・AV関連製品におけるEC販売比率は2021年の38%から2022年には42%へ上昇しており、スピーカーのオンライン購入の比重は今後さらに高まると見込まれています。
タイプ別・用途別の市場動向
タイプ別では、有線スピーカーとワイヤレススピーカーに分類され、このうちワイヤレススピーカーが大きなシェアを占めています。配線の少なさ、携帯性、Bluetooth・Wi-Fi対応、各種デジタルプラットフォームとの連携性が、日本の消費者の生活スタイルに合致しているためです。
用途別では、コンシューマーエレクトロニクス、プロフェッショナルオーディオ、自動車、その他に分類されます。一般家庭向けではBluetoothスピーカー、スマートスピーカー、ホームシアター機器が中心です。プロフェッショナルオーディオはイベント会場や業務施設などで使用され、自動車用途では車内エンターテインメントの品質向上が需要を支えています。
主要企業と競争環境
日本市場の競争環境では、Sony、Samsung Electronics、Bose、Sonos、LG、Panasonic、Apple、Amazon、Alphabet、Marshallなどが主要企業として挙げられています。これらの企業は、従来のオーディオメーカーだけでなく、スマートフォン、クラウド、AI、スマートホームのエコシステムを持つテクノロジー企業も含まれています。
Sonyは幅広い分野をカバーし、音質だけでなく若年層へのブランド訴求も重視しています。Apple、Amazon、Alphabetは、自社の音声アシスタントやストリーミングサービスとの統合を通じて競争力を高めています。これにより、スピーカー市場の競争軸は音質だけでなく、デジタルサービスとの連携性にも広がりを見せています。
今後の市場展望
今後の日本市場では、ホームシアターとポータブルスピーカーという異なる二つの方向が同時に成長すると考えられます。家庭では高音質・多チャンネル化が求められる一方、外出時には小型・軽量・ワイヤレス性が重視されるためです。スマートスピーカーにおいては、音声アシスタントの使いやすさやIoT機器との互換性が重要になり、エコシステム全体での競争が強まるでしょう。
音楽・動画ストリーミングサービスの普及は、市場の長期的な需要基盤となります。コンテンツへのアクセスが容易になるほど、高音質で聴きたいというニーズが生まれ、Bluetoothスピーカーやホームオーディオへの購入動機につながると見られています。
市場全体のCAGRは3.6%と緩やかな成長が見込まれており、新規普及よりも、既存スピーカーからワイヤレス、高音質、スマート機能付き製品への買い替えが成長の中心となる可能性が高いです。特に低価格帯のBluetoothスピーカー市場では差別化が求められ、高価格帯ではホームシアターやマルチルームオーディオなどでの付加価値向上が重要になると考えられます。
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