日本の自動車TIC市場、2032年に向けて成長を予測
2024年に52億900万米ドル規模であった日本の自動車試験・検査・認証(TIC)市場は、2032年には86億5,330万米ドルまで拡大すると予測されています。この期間における年平均成長率(CAGR)は6.55%が見込まれており、市場の着実な成長が期待されます。国土交通省(MLIT)が管轄する厳格な安全性、排出ガス、品質基準への適合は、この市場において重要な役割を担っています。2023年度には350万台を超える車両リコールが記録されており、自動車メーカーにとって継続的な検査や是正対応の重要性が高まっています。
電動化の推進が市場成長を後押し
市場成長の大きな背景には、日本政府が2035年までに新車乗用車販売を全面的に電動化する方針を掲げていることがあります。この方針により、バッテリー、ソフトウェア、電磁両立性(EMC)、高電圧システムなどに関する高度な試験需要が拡大しています。トヨタやホンダなどの大手自動車メーカーも、社内の研究開発・試験施設を強化し、検証・適合確認能力を高めている状況です。
ロボティクスと自動化の導入
日本市場の特徴的なトレンドとして、試験施設におけるロボティクスと自動化の急速な導入が挙げられます。国際ロボット連盟によると、日本では2023年に35万台を超える産業用ロボットが稼働しており、その一部は自動車の衝突試験、耐久試験、高精度検査などにも活用されています。こうした自動化は、経済産業省(METI)が推進するスマート製造政策とも整合しており、安全性・排出ガス検証の一貫性を高めるとともに、試験負荷の増加への対応にも寄与しています。
市場区分と主要な成長ドライバー
市場は、自動車コンポーネント/試験タイプ、車両タイプ、調達形態、サービス別に区分されています。
主要な成長ドライバーは、電動車向け試験要件の拡大です。2035年までに新車乗用車を電動化する政府方針により、高電圧バッテリー、充電インフラ、パワーエレクトロニクス、車載ソフトウェアなどを対象とした厳格な検証が求められています。これらは国土交通省の型式認証基準を満たす必要があり、経済産業省もグリーン成長戦略の中でEVインフラを重点領域として位置づけています。
電動化対応の具体的な動き
電動化に対応するため、バッテリー搭載車の衝突安全試験やEV部品の耐久試験など、より専門性の高い試験設備も拡大しています。具体例として、UL Solutionsは豊田市に先進的な自動車向けEMC試験所を設置する計画を進めています。これは、車両の電子化が進むにつれて重要性が増す電磁干渉リスクの低減を目的としています。
市場成長の制約要因
一方で、市場成長の制約要因として、複数の規制制度に同時に対応するための高コストと複雑性が挙げられます。国土交通省の型式認証制度では、市場投入前に広範な適合確認が必要であり、自動車メーカーや部品メーカーは、高精度試験設備、先進的な研究所、専門人材への継続的な投資を求められます。また、日本市場では国内基準だけでなく、輸出向けにUNECEなどの国際基準にも対応する必要があり、試験サイクルの長期化と運用コストの増加につながる可能性があります。
セグメント別の動向:社内試験・認証の重要性
セグメント別では、社内試験・認証が大きなシェアを占めています。大手自動車メーカーは、電動化や安全規制への対応を加速するため、社内にバッテリー、排出ガス、ソフトウェア試験施設を整備しています。これにより、開発期間の短縮と認証対応力の向上を図っています。社内TIC体制の強化は、初期段階の検証で第三者サービスへの依存を減らすだけでなく、リコール対応の面でも重要です。
持続可能性への貢献
自動車TIC市場は、持続可能性の観点でも重要な役割を担っています。自動車部門は日本のCO₂排出量の約16%を占めるとされており、2035年までの新車電動化方針と合わせて、バッテリー性能、EMC、エネルギー効率などの試験需要を押し上げています。また、日本の使用済自動車リサイクル法により、TIC事業者はリサイクルや循環型経済に関する検査・文書確認にも関与しています。
競争環境と主要企業の動き
競争環境では、SGS、Bureau Veritas、TÜV SÜD、DEKRA、Intertek、Applus+、Element Materials Technology、UL Solutions、DNV GLなどの国際的な試験・検査・認証企業が主要プレイヤーとして挙げられています。これらの企業は、EV、EMC、ソフトウェア、デジタルシステム、国際規格適合などの専門サービスを拡大しています。
最近の主要な動きとして、2025年3月16日にUL Solutionsが豊田市に先進的な自動車用EMC研究所を設置する計画を発表しています。
まとめ
日本の自動車試験・検査・認証市場は、厳格な国内規制、2035年に向けた電動化、EV・バッテリー・ソフトウェア・EMC試験の拡大、ロボティクスと自動化の導入などを背景に、今後も着実な成長が期待されます。大手OEMによる社内試験能力の強化と、専門性の高い第三者TICサービスの拡大が並行して進む点が特徴です。今後は、自動化、デジタル検証、シミュレーション、EMC、ソフトウェア認証などを効率的に統合できる企業が競争上有利になるでしょう。
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