日本の車載インフォテインメント市場、2035年には26.8億米ドル規模へ拡大予測 – SDVへの移行が成長を牽引

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安和 賢二(やすわ けんじ)

愛車歴20年!メインはトヨタ車。カーリースを活用して維持費を最大限抑えながら好きな車にも気軽に乗れるカーライフを送ってます。これまでのモーターライフで得た経験をもとに、維持費を抑えて賢く運転する情報を発信する「enjoyモーターライフ」を運営。

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市場成長の主要因はソフトウェア定義車両(SDV)とコネクテッドモビリティ

市場成長を支える最大の要因は、ソフトウェア定義車両(SDV)への移行とコネクテッドモビリティの拡大です。日本では、車内インフォテインメントが従来のオーディオやナビゲーション機器から、スマートフォン、クラウド、車両情報、運転支援機能を統合するデジタルコックピットへと移行しています。消費者は車内でも途切れなくナビゲーション、ストリーミング音楽、各種アプリへアクセスすることを求めており、自動車メーカーはモバイルプラットフォームとの互換性や常時接続性を強化している状況です。

近年の車両では、ナビゲーション、エンターテインメント、インターネット接続、車両情報、運転支援を一つの画面やシステムへ統合する設計が増加しています。さらに、OTA(Over-The-Air)によるソフトウェア更新、スマートフォン連携、音声認識、クラウドサービスとの接続が標準的な方向になっている点も重要です。インフォテインメントは、車両販売時に機能が固定される装置ではなく、購入後もソフトウェア更新によって進化するシステムへと変化しています。

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主要な市場トレンドと技術革新

SDVの拡大

SDVの拡大は市場の最も重要なトレンドの一つです。従来の自動車では、ナビ、オーディオ、メーター、各種ECUが比較的独立したシステムとして動作していましたが、SDVでは中央集約型のソフトウェアアーキテクチャを使用し、複数機能を共通の計算・ソフトウェア基盤で制御する方向が強まっています。これにより、ナビゲーション、車両情報、エンターテインメント、クラウド接続などを一体化しやすくなり、購入後に新機能を追加したり、UIを改善したりすることも可能になります。

具体的な事例として、2026年3月にはトヨタがRAV4の新型車を投入し、パナソニック オートモーティブシステムズが開発した高度なIVI(In-Vehicle Infotainment)技術を採用しました。このシステムはトヨタのAreneソフトウェアと連携し、OTA更新、スマートフォン統合、クラウドベースのナビゲーション、音声認識の高度化などに対応するとされています。また、2024年5月にはトヨタが接続性とユーザーインターフェースを強化した新世代マルチメディアシステムを投入しており、こうしたソフトウェア中心の車両設計が市場を押し上げています。

自動車メーカーと半導体・電子機器メーカーの提携

高度なデジタルコックピットでは、高精細グラフィックス、AI処理、音声認識、複数画面、クラウド通信などを同時に処理する必要があり、高性能な車載コンピューティング基盤が求められます。このため、自動車メーカーと半導体・電子機器メーカーの提携が活発化しています。例えば、2025年1月にはパナソニック オートモーティブシステムズがクアルコム・テクノロジーズとの協業を拡大し、Snapdragonプラットフォームを使ったコックピットシステムの開発を進めました。このような協力は、半導体企業が車載インフォテインメントの性能を左右する重要なプレイヤーになっていることを示しています。

EVの普及とAIの導入

電気自動車(EV)の普及もデジタルコックピットの需要を押し上げています。EVでは大画面タッチスクリーン、接続機能、音声操作、高度なナビゲーションなどが商品価値の一部になりやすく、インフォテインメントが従来の車両よりも目立つ役割を担っています。特にEVのナビゲーションは、充電施設検索や車両情報表示などと結び付くため、車両制御システムとの統合度が高くなる傾向にあります。2025年10月にシャオミが大画面センターコンソールと高度なデジタルコックピットを備えたSU7を紹介した事例は、EV市場において「車内デジタル体験」そのものが差別化要因になっていることを示しています。

AIの導入もインフォテインメントの機能を大きく変えています。ナビゲーションでは、リアルタイム交通情報や利用履歴などを使って経路を最適化するだけでなく、車両内でAI処理を行うローカルAI型の技術も登場しています。2026年1月にはヴィステオンとトムトムが、車両内で動作するローカルAIベースのナビゲーションソリューションを発表しました。AIはナビゲーションだけでなく、音声アシスタントやユーザー操作にも利用され、より自然な会話形式での目的地設定やメディア操作が可能になる方向へ進んでいます。

車載半導体プラットフォームの進歩

車載半導体プラットフォームの進歩も重要です。高性能かつ省電力なプロセッサーが普及することで、高精細グラフィックス、複数ディスプレイ、AI機能、クラウド通信を一つのプラットフォームで処理しやすくなっています。2024年6月にはルネサス エレクトロニクスがSDV向けのR-Car Open Access Platformを投入し、自動車メーカーやソフトウェア企業が新機能を迅速に開発・統合できるようにすることを目指しています。

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製品別・装着タイプ別・車種別の市場動向

製品別

製品別では、オーディオユニット、ディスプレイユニット、ヘッドアップディスプレイ、ナビゲーションユニット、コミュニケーションユニットに分類されます。デジタルコックピットの普及を背景に、いずれのカテゴリーにも成長余地があると考えられます。特にディスプレイとナビゲーションは、大型タッチスクリーンやリアルタイムマッピングの普及によって技術革新が速い分野です。通信ユニットはクラウド接続や車両間通信などを取り込むことで、車を常時接続されたデジタル端末へ近づける役割を持っています。

オーディオユニットも依然として高い需要があり、スマートフォン連携、音声操作、クラウド音楽サービスなどを統合し、車内エンターテインメントを高度化する需要が強まっています。2023年7月にはパイオニアがAndroidベースのインフォテインメントシステムを投入し、アプリやスマートフォンとの連携を柔軟にしています。ナビゲーションユニットでは、AIによるルート最適化、ライブ交通情報、クラウドマップなどが成長を支え、「スマートナビゲーション」への移行が進んでいます。2025年7月にはヒョンデがナビゲーション機能へGoogle Placesを採用し、リアルタイム性の高い位置情報サービスを強化しました。ヘッドアップディスプレイは、運転者が前方から視線を大きく外さずに情報を確認できる点が強みです。コミュニケーションユニットは、スマートフォン、クラウド、他車両、外部サービスなどとの接続を担い、SDV化が進むほどインフォテインメントと通信機能は分離しにくくなると見られています。

装着タイプ別

装着タイプ別では、OEM装着とアフターマーケットに分類されます。現時点ではOEM装着型が市場を主導しており、新車製造時からデジタルコックピットや接続機能を組み込むケースが増えています。OEM型の強みは、インフォテインメントを車両の他システムと深く統合できる点にあり、OTA更新を前提にする場合も車両ソフトウェアとの統合を行いやすいとされています。2024年3月にはパナソニック ホールディングスがApollo Fundsとの提携を通じて自動車電子分野の革新を強化した事例が挙げられており、OEM向け車載電子事業を強化する動きが続いています。

一方、アフターマーケットはCAGR7.3%で伸びると予測されています。既存車へ大型タッチスクリーン、ナビゲーション、スマートフォン接続などを後付けしたい需要が背景にあります。日本では車両保有期間が長いケースもあるため、新車へ買い替えなくてもデジタル機能をアップグレードできるアフターマーケット製品には一定の需要があります。2025年9月にはコンパル エレクトロニクスが日本で自動車電子事業を拡大し、柔軟なインフォテインメントシステムの開発を進めたとされており、こうした製品がアフターマーケットの拡大にも寄与しています。

車種別

車種別では乗用車と商用車に分類され、乗用車が市場を主導しています。乗用車は2026年から2035年にかけてCAGR7.6%で成長すると予測されており、コネクテッドインフォテインメント、スマートナビゲーション、デジタルコックピットへの需要が大きいと見られています。AIベースの音声アシスタント、高精細ディスプレイ、スマートフォン連携などが利便性とパーソナライゼーションを高めています。2023年5月にはメディアテックとNVIDIAがDimensity Autoプラットフォームを発表した事例が挙げられており、半導体・AI企業の技術が乗用車インフォテインメントの高度化に直接関与するようになっています。

商用車でもインフォテインメント需要が拡大しており、娯楽用途以上に、ナビゲーション、テレマティクス、リアルタイム通信、フリート管理など業務効率に直結する機能が重要視されています。物流事業者は車両位置、配送ルート、交通状況などをリアルタイムに確認する必要があるため、インフォテインメントシステムがフリート管理端末としての役割も担っています。2026年4月にはNeolixとPegasusが日本で自律モビリティソリューションを展開した例が挙げられています。

地域別

地域別では関東、関西、中部、その他に分類され、関東が市場を主導しています。これは自動車・電子機器メーカーの研究開発拠点が集中していることが背景にあると考えられます。なお、関東の予測CAGRについては、レポート内で7.5%と8.9%の二つの記載があり、この数値は整合確認が必要とされています。また、2025年の地域別シェアとして中部が19.3%を占めたとされており、中部は自動車製造の集積が大きいため、OEM向けインフォテインメント需要にとって重要な地域です。

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市場競争と今後の展望

市場競争では、高度なデジタルコックピットの構築が中心テーマとなっています。ナビゲーション、マルチメディア、通信、車両情報表示を別々のシステムとして扱うのではなく、一つのプラットフォームへ統合する方向が明確です。さらに、OTA更新、AI音声アシスタント、リアルタイムナビゲーション、スマートフォン接続への投資が拡大しています。競争力はディスプレイの大きさだけでなく、購入後もソフトウェアを更新し続けられるか、複数サービスをシームレスに統合できるかで決まると言えるでしょう。

自動車メーカーと半導体メーカー、ソフトウェア企業、モビリティ企業との協業も重要です。主要企業としては、パナソニック、三菱電機、ケンウッド、パイオニアなどが挙げられ、このほかアルパイン、デンソー、富士通テン、クラリオン、太平洋工業なども市場に関与しています。2025年12月にはパイオニアのナビゲーションシステムがスズキ XBEEへ採用され、2025年8月には日産が大型インフォテインメントディスプレイを備えたRooxを投入したとされており、新型車における画面大型化とデジタル機能の標準化が続いています。

今後の日本市場では、インフォテインメントとADAS(先進運転支援システム)・車両制御との境界がさらに曖昧になると考えられます。ナビ画面に運転支援情報を表示したり、車両状態に応じて警告や推奨行動を提示したりする場合、インフォテインメントは単なる娯楽装置ではなく、運転中の情報ハブになるでしょう。同時に、音声インターフェースの重要性も高まります。また、OTA機能が普及することで、車両販売後もナビ、音声認識、UIなどを継続的に改善できるため、自動車メーカーにとってインフォテインメントは「販売時点で完成したハードウェア」から「継続的にサービス価値を追加するソフトウェア基盤」へと変化していくでしょう。

総合すると、日本の自動車インフォテインメント市場は「車内で音楽や地図を提供する機器市場」から、「車両とクラウド、スマートフォン、AI、運転支援をつなぐソフトウェア中心の車内デジタルプラットフォーム市場」へ移行していくと考えられます。競争力を左右するのは、画面サイズや音質だけでなく、購入後も機能を更新できるか、複数の車両システムを自然に統合できるか、そして利用者にとって安全で直感的なデジタル体験を提供できるかという点になるでしょう。

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